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HACCP対応を支援:病原微生物の定量的リスク評価に資するデータベースとソフトウェアの構築
口頭発表テーマ:HACCP対応を支援:病原微生物の定量的リスク評価に資するデータベースとソフトウェアの構築
- 口頭発表あり
2026年06月02日(火)15:00~15:10
テーマ
DX技術(IoT、AI含む)
研究機関名
北海道大学 大学院 農学研究院 食品加工工学研究室
代表者名
小山 健斗
発表概要文
1. 研究の背景と目的 食品衛生法改正により、日本国内のすべての食品関連事業者に対してHACCPに沿った衛生管理が原則義務化された。HACCPの本質は、抜き取り検査や経験則ではなく科学的根拠に基づき、危害要因の発生確率と影響を考慮する「リスクベース」の管理にある。しかし、実際にHACCPの危害分析で必要な定量的リスク評価を行うには、膨大な学術論文や公的報告書から「どの食品に、どの病原菌が、どの程度含まれるか(汚染実態)」や「どの程度摂取すると健康被害が出るか(用量反応関係)」といったデータを個別に収集する必要があり、多大な労力を要する。本研究は、これらの定量データを標準化し、研究者や食品等事業者がワンストップでアクセスできる「共通情報基盤(データベースおよびソフトウェア)」を構築することで、文献調査の負担を軽減し、HACCPの危害分析で必要なリスク評価を支援することを目的としている。 2. 研究の方法と構築されたシステム 研究グループは、学術論文や行政機関の報告書を対象に、データを収集・構造化しまた。 • 陽性率・汚染濃度データベース:カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、黄色ブドウ球菌などの主要な食中毒菌を対象に、約11万2000検体のデータを収集。2000年から2024年までに国内で実施された調査報告を対象に、データを収集・構造化した。 • 用量反応関係データベース:感染型危害要因と毒素型危害要因に関する数理モデルおよびデータを体系的に整理した。 • ソフトウェアの開発:収集したデータを視覚的に把握できるソフトウェアを開発し、公開した(Fig. 1とFig. 2)。海外からの利用も想定し、英語版にも対応している。 本研究の成果は、日本国内の汚染実態を網羅的に集約した唯一の情報基盤であり、HACCPにおける危害要因分析や管理水準の妥当性を、国内の具体的なデータに基づいて定量的に説明することを可能にする。これにより、抜き取り検査や経験則に依存した管理から、データ駆動型のリスクベース管理への移行を強力に支援する。今後は、微生物の増殖・死滅予測モデル等と連携し、より統合的なリスク評価基盤への発展が期待される。