アカデミックプラザ
水のダイナミクスを基盤とした要素技術開発〜新しい凍結乾燥・凍結濃縮技術の開発〜
口頭発表テーマ:水のダイナミクスを基盤とした要素技術開発〜新しい凍結乾燥・凍結濃縮技術の開発〜
- 口頭発表あり
2026年06月03日(水)15:55~16:05
テーマ
加熱・乾燥
研究機関名
九州大学 工学研究院 化学工学部門 第四講座(熱プロセス工学研究室)
代表者名
中川 究也
発表概要文
食品中に含まれる水は、食品がもつあらゆる特性とリンクしている。すなわち食品の貯蔵性、栄養機能、食味・食感にいたる広範な物理化学的特性の支配因子のひとつが水であり、その状態とダイナミクスの制御は食品製造技術の大きな核といえる。当研究室では、乾燥・冷凍・濃縮操作を食品中の水を制御するためのコア技術と捉え、それらのプロセスを従来技術よりも強化させることを目指している。すなわち効率向上、機能創出、省エネルギーの実現などが目標となる。まず、従来法と代わる凍結乾燥技術として、真空霧化凍結乾燥法、常圧凍結乾燥法のそれぞれについて、それらの実施事例と作製した製品の特性を報告する。 真空霧化凍結乾燥法は真空中に霧化した液滴を、自己凍結によって凍結、そのまま凍結乾燥させる新規凍結乾燥法である。凍結乾燥による粉体製造プロセスとしての新規性だけでなく、ミストを自己凍結させる凍結手法の特殊性による粉体物性の変化が期待できる。マンニトール溶液の凍結乾燥をモデルケースとし、プロセスの違いによる結晶多形の形成の違いを検証した結果を報告する。 常圧凍結乾燥は真空を利用しない凍結乾燥法であり、作製する乾燥製品の特性が真空凍結乾燥法によるものとおおきく異なる。乾燥過程において流通させる乾燥空気の温度を変化させられることが操作上の特徴であり、空気温度設定によって乾燥製品の物性が大きく変化することを見出している。特に、同程度の含水率であっても水分活性が異なる乾燥製品をつくることができることは興味深く、貯蔵性や食感の制御をよりフレキシブルに実現することに繋がる。 凍結濃縮は低エネルギーかつ高効率で液状食品を濃縮できる技術として知られているが、操作の複雑さが社会実装のハードルとなってきた。簡易な凍結濃縮技術として、溶液氷塊の初期融解液を回収するブロック凍結濃縮法があるが、工業操作としては実現していない。本研究室ではこのプロセスを数学的モデルで表現することで、合理的な装置設計、操作指針を示すことに取り組んでいる。スクロース溶液の濃縮をモデルとし、濃縮率と回収率を最適とする解凍率の推算を機構モデルによって実施できるようにしている。予測最適点の例として、10%の解凍率で実施する操作により7倍濃縮の溶液を溶質回収率60%で実現できる。