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最新の研究事例の紹介~食品分野に対する3Dプリンタ応用からデータサイエンス応用まで~
口頭発表テーマ:最新の研究事例の紹介~食品分野に対する3D プリンタ応用からデータサイエンス応用まで~
- 口頭発表あり
2026年06月04日(木)15:40~15:50
テーマ
バイオ
研究機関名
九州情報大学 経営情報学研究科 荒平研究室
代表者名
荒平 高章
発表概要文
近年,食品分野において最新技術を融合させる試みが加速している.その一例が,3Dプリンティング技術を活用したコーヒードリッパの開発である.既存の製品構造を改良することで,コーヒー文化に革新をもたらすことが期待される.研究では,SNSを通じた175人への嗜好調査に基づき,需要の高い中深煎りの豆を用いて既存の製品との比較が行われた.官能評価の結果,3Dプリントによるオリジナルドリッパは,業界標準とされる製品と同様にバランスの良い風味を抽出しつつ,TDSメータによる濃度測定では既存製品を上回る数値を実現することに成功した.この成果は,精密な製品開発と持続可能な製造プロセスの可能性を示唆している. 一方で,日本の伝統的な食文化である醤油醸造においても,デジタル技術の導入が進められている.現在,国内の醤油メーカーは減少傾向にあり,職人の経験や五感に頼ってきた発酵工程の技術伝承が大きな課題となっている.この「ブラックボックス」化したプロセスを客観的に捉えるため,再帰型ニューラルネットワークの一種であるLSTMを用いたアルゴリズム解析が試みられた.撹拌時間や品温,pHといった製造データを学習させた結果,現時点では予測値と実測値に乖離が見られるものの,モデルが相関関係を逐次的に学習するプロセス自体は有効に機能していることが確認された.今後は,現場の熟練技術者が持つ知見をデータに反映させることで,伝統的製法のデジタル化と品質の安定化を目指す. これら二つの研究は,データサイエンスや先端技術を用いて食の未来を切り拓こうとする共通の目的を持っている.個人の嗜好に寄り添う抽出器具の開発と,伝統の味を守るためのAI活用は,どちらも豊かな食文化を次世代へ繋ぐための重要な一歩であると言える.