アカデミックプラザ
超臨界魚油抽出および旨味調味料開発による低利用魚の有効利用
テーマ
飲食料品加工(その他)
研究機関名
国立台湾海洋大学 食品科学専攻 食品工学研究室
代表者名
劉 修銘
発表概要文
【研究背景:低利用水産資源のアップサイクル】 台湾・澎湖海域で多獲される「小鱗脂眼鯡(Etrumeus micropus、イワシの一種)」は、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸を豊富に含みながらも、加工利用が難しいため、従来は飼料や魚粉などの低価格な用途に限られていた。本研究では、この未利用資源に先端加工技術(超臨界二酸化炭素抽出および酵素加水分解)を適用することで、高機能な魚油と風味豊かな調味素材へ加工する利用モデルを構築した。 【技術1:超臨界CO2による高品質魚油の抽出】 安全性が高い「超臨界二酸化炭素抽出技術」を用い、魚粉から機能性成分を効率的に回収するプロセスを最適化した。 • 抽出条件の確立: 圧力400 bar、温度60°C、抽出時間120分の条件下において、未篩別の魚粉を用いることで最も高い抽出効率と回収率を達成した。なお、二酸化炭素の流速による有意な影響は認められなかった。 • 高品質な成分: 抽出された魚油には6.6%のEPAおよび15.2%のDHAが含まれており、機能性魚油としての高い潜在性が示された。 【技術2:抽出残渣の酵素分解による旨味素材化】 魚油抽出後の残渣(脱脂魚粉)を廃棄せず、酵素加水分解することでタンパク質の低分子化を促進し、付加価値の高い調味ベースを開発した。 • 旨味の増強: 酵素処理により、アスパラギン酸やグルタミン酸などの旨味アミノ酸、およびグリシンやアラニンなどの甘味アミノ酸が顕著に増加した。 • 風味特性: 保持された核酸系旨味成分であるイノシン酸(IMP、96〜103 mg/kg)と遊離アミノ酸との相乗効果により、官能評価および味覚センサー分析において、強い旨味と持続性のあるコク(旨味の後味)が確認された。 【産業的展望:経済性とSDGsへの貢献】 プロセスシミュレーション(SuperPro Designer)による経済性評価の結果、本プロセスは設備依存型の高資本集約型モデルであることが判明した。 • 収益性と課題: 原料供給が安定している条件下では十分な収益性と約5年での投資回収が見込まれる一方、供給変動が単位コストに大きく影響するリスクも明らかとなった。 • サステナビリティ: 本技術は、小鱗脂眼鯡から機能性魚油と調味素材を同時に製造するものであり、水産廃棄物の削減と資源の高度利用を両立するフードテックソリューションとして期待される。