FOOMA JAPAN 2025 〜世界最大級の食品製造総合展〜 | 一般社団法人 日本食品機械工業会主催

アカデミックプラザ

界面活性剤を使用しない乳化技術 “三相乳化法”

  • 口頭発表あり

2025年06月12日(木)14:20~14:50

テーマ

飲食料品加工(その他)

研究機関名

神奈川大学研究推進部産学官連携課 三相乳化プロジェクト

代表者名

一宮 航

発表概要文

「三相乳化法」は、従来の乳化方法に欠かせない界面活性剤の代わりに、「柔らかい親水性ナノ粒子」の物理的作用力(ファンデルワールス引力)を利用した新しい乳化方法である。この乳化方法は、物質固有の性質に依存せず粒子の大きさや形だけに依存する、従来の乳化方法とは全く異なるアプローチに基づく画期的な方法である。本発表では、そのメカニズムと食品分野へ活用可能な事例を中心に紹介する。 「三相乳化法」の主な特徴として約8~400nmの範囲であるナノサイズの粒子が不可逆的なファンデルワールス引力で油滴表面に凝集・付着するために、油脂種を問わず乳化可能になる点や天然物も乳化剤の対象になる点が挙げられる。また、三相乳化で使用可能な粒子は可食かつ汎用的に使用されている基材が多く、生理的にも環境的にも温和な物質が使用できることが特徴である。 三相乳化法は、柔らかい親水性ナノ粒子によって油剤を乳化安定化させるために、通常の界面活性剤乳化と比較して乳化の作用機序が異なるだけでなく、乳化物性においても明確に差異が現れている。これまで300品以上の製品化実績を有し、食品分野においては以下の特徴を活用することが可能である。 ・油種を問わない乳化 ・エマルション混合の容易化 ・高い泡保持性 ・耐酸、耐塩性 今後は産学連携を通じて、「機能性食品や栄養補助食品など、より高度な食品設計への応用」、「冷凍食品の口当たり、食感、保存性などの品質向上」、「添加物を低減した健康志向の高い食品開発」といった需要が高まっている分野への活用に発展することが期待できる。 また、総合大学である神奈川大学は、サプライチェーンマネジメント等の研究者も複数在職しており、要素技術のみならず社会実装を見据えた一気通貫型の研究開発が可能である。2028年に創立100周年を迎えるにあたって企業や地域との連携を強化中であり、国内有数の研究開発拠点や物流拠点を有する横浜に根差した優位性を有する大学として、三相乳化法を通じた組織対組織の産学官連携に発展することを期待している。