アカデミックプラザ
水産加工残滓の有効活用を目指した原料特性を活かす素材加工技術
-北海道産シロザケの尾ヒレを原料とした調味料素材の開発-
テーマ
衛生対策・品質管理(殺菌、洗浄、異物除去含む)
研究機関名
北海道立総合研究機構 釧路水産試験場 加工利用部
代表者名
武田浩郁
発表概要文
本研究では未利用資源であるシロザケの尾ヒレ(サケヒレ)から調味料素材用のエキスを製造するため,サケヒレを原料としてエキス(サケヒレエキス)を調製し,原料の加工,抽出および濃縮方法の違いがエキスの官能的特徴(味,風味,テクスチャー)に及ぼす影響を検討した。 原料からエキスを抽出する方法は開放系または密封系で行う熱水抽出法とした。密封系で得られたエキスは,エキスの濃度を高めるために3種類の方法(加熱,凍結減圧,常温減圧)で濃縮を行った。 サケヒレエキスの固形物,総遊離アミノ酸およびアンセリン濃度は原料を粗挽きして,密封系で抽出することによって上昇した。サケヒレエキスの香気成分をGC-MS分析によって検出し,それらの特徴を主成分分析から検討した。粗挽きしたサケヒレのエキスは市販品と類似していた。濃縮したエキスは脂肪臭が特徴的であった。粗挽きと乾燥を行った原料のエキスは青果臭を特徴とした。乾燥後に焼成を行った原料のエキスではロースト臭が特徴的であった。サケヒレエキスの官能的特徴は鮭を想起させる風味であった。エキスの官能的特徴は濃縮することによって変化し,加熱による濃縮では「焼鮭の風味」,凍結減圧による濃縮では「煮干し様のえぐみ」,常温減圧による濃縮では「生魚様の風味」となった。乾燥した原料から調製したエキスは,鮭の風味に加えて,脂っぽいテクスチャーであった。また,乾燥後に焼成を行った原料のエキスは焼鮭の風味であった。 以上の結果より,サケヒレから鮭の風味を有するエキスの調製が可能となった。さらに,サケヒレエキスに焼鮭風味を付与し,調味料素材としての用途を拡大する方法として,エキスの加熱による濃縮および原料段階での乾燥と焼成の導入が有効である。