アカデミックプラザ
次世代ナノ加工技術を駆使したプラスチックによる高性能 “抗菌・撥水・防汚” 食品包装材
- 口頭発表あり
2025年06月12日(木)10:50~11:20
テーマ
衛生対策・品質管理(殺菌、洗浄、異物除去含む)
研究機関名
公立大学法人 富山県立大学 工学部 医薬品工学科 ライフサイエンス材料研究室
代表者名
竹井 敏
発表概要文
本研究は、SDGsに対応した環境配慮型の新素材として、抗菌性を有するプラスチックの創出とその製造技術の開発を目的としている。本技術は、微細加工によってプラスチック表面にナノサイズの微細構造を形成することで、化学物質を使用せずに抗菌性を付与できる点が特徴である。この技術を用いることで、製造段階における衛生管理の向上、流通段階での消費者の信頼性向上、消費段階での衛生管理および製品を安全に使用できる期間の延長に寄与し、産業における革新を目指す。 研究の中核をなす技術として、気泡の巻き込みを防ぐガス透過性金型を射出成形機(プラスチック製品を大量生産するための汎用性が高い機械)に応用した。この技術を用いることで、ポリプロピレン表面にナノサイズの微細構造を形成し、単一の金型で3000回の連続成形が可能になった。成形されたポリプロピレン表面は水の接触角が45.1°向上し、優れた撥水性を示すとともに、約48%の抗菌活性を発揮した。この抗菌性は化学物質を用いずに実現されるため、安全性が高く、特に食品包装材としての利用が期待される。これにより、食品の鮮度維持や安全性向上、食品ロスの削減、食中毒リスクの低減が見込まれる。 さらに、この技術はSDGsの「3 すべての人に健康と福祉を」および「12 つくる責任 つかう責任」にも貢献する。抗菌プラスチック製品の開発は、感染症予防や衛生環境の向上を実現するだけでなく、製品の長寿命化により資源効率を向上させ、持続可能な社会の構築を目指す。本研究の成果は、抗菌性を備えた新素材とその製造技術の普及を通じて、社会全体の衛生環境の改善と環境負荷の軽減に寄与することが期待されている。