アカデミックプラザ
食品微細構造の改質・評価を通じた付加価値化
テーマ
加熱・乾燥
研究機関名
国立大学法人 筑波大学 生命環境系農学域 農産食品加工研究室
代表者名
北村 豊
発表概要文
本研究は,食品加工技術と品質評価技術の革新を目指し,特にコーヒー生豆(GCB)の微細構造改質と,食品の食感評価に用いるレーザー散乱法の開発に取り組んだ。 1. GCBの微細構造改質と抽出特性の向上:従来のコーヒー加工は焙煎や抽出条件に依存していたが,本研究では物理的処理を活用し,生豆の微細構造を改質することで抽出効率の向上を図った。具体的には,熱風乾燥(HD),凍結乾燥(FD),短時間加熱膨張(SHP),マイクロ波加熱膨張(MWP)を用いて多孔化を試みた。処理後のGCBを電子顕微鏡や比重測定法で評価した結果,MWP(特に60秒加熱+加圧処理)が最も細孔率を高め,カフェインやクロロゲン酸(CGA)の抽出量も顕著に増加した。この技術により,風味や機能性成分の最適化が期待される。 2. 食品の食感を推定するレーザー散乱法の開発:食品の微細構造を非破壊で評価するため,レーザー散乱法を開発した。この手法では光の散乱特性を分析し,HDR(ハイダイナミックレンジ)画像合成を活用することで,微細構造の変化を精密に捉えることが可能となった。 ① チーズの熟成度評価 熟成日数9~285日のチェダーチーズを対象に,レーザー散乱プロファイルとテクスチャー分析を組み合わせて熟成度を推定した。熟成前半では輝度が上昇し,後半では低下する傾向を示した。また,ランダムフォレスト回帰分析を用いた予測モデルにより,高精度な熟成度推定が可能であることを確認した。 ② アボカドの追熟度評価 表面の凹凸が計測の精度を低下させる問題に対し,試料を回転させながら測定する手法を導入し,計測誤差を低減した。追熟アボカド140個を対象に硬さを測定し,食べ頃かどうかを判別するモデルを構築した結果,判別精度71%,食べ頃判定の再現率79%を達成した。 結論と今後の展開として,GCBの微細構造改質による抽出効率向上と,レーザー散乱法による食品の非破壊評価技術を確立し,高品質な食品製造への応用が期待される。今後は,光の侵入距離や強度の最適化により,さらに精度を高めることが課題となる。