FOOMA JAPAN 2026 〜世界最大級の食品製造総合展〜 | 一般社団法人 日本食品機械工業会主催

アカデミックプラザ

エチレン含有可食性コーティングによる青果物の追熟制御
口頭発表テーマ:エチレン含有可食性コーティングによる青果物の追熟制御

  • 口頭発表あり

2026年06月04日(木)15:25~15:35

テーマ

鮮度保持

研究機関名

九州大学大学院 生物資源環境科学府 環境農学専攻 農産食料流通工学研究室

代表者名

田中史彦

発表概要文

近年,青果物のフードロス削減は世界的課題となっており,日本国内においてもその重要性が高まっている。青果物は穀類や加工食品と比較して廃棄率が高く,収穫後も代謝活動を継続することや水分含量の高さ,外力に弱い構造が品質劣化を速める主因とされる(北澤,2023)。消費者が重視する品質要素には味,鮮度,外観,価格,安全性,産地などが挙げられ(農林水産統計,2019),特に外観と鮮度の保持は流通における廃棄削減に直結する重要な課題である。 バナナは日本で最も消費量の多い果実であるが,エチレンによる追熟処理後の品質劣化が速く,輸送や陳列時の衝撃による外傷がさらに劣化を加速させる。また脱プラスチックの流れにより従来のプラスチック包装の削減が求められ,新たな品質保持手法の開発が必要となっている。こうした背景から,可食性コーティングが環境負荷の低減と品質保持を両立できる技術として注目を集めている。 可食性コーティングは果実表面に薄膜を形成し,蒸散抑制・水分保持・内部品質の変化遅延などの効果を示すことが知られている(Thakur, 2018)。さらに外傷や乾燥による外観劣化の抑制,シュガースポットの出現抑制にも寄与し,青果物の品質保持に有望な技術である。しかし従来のコーティングはエチレン追熟処理とは別工程で行う必要があり,設備的負担や処理時間の増加が導入の障壁となってしまう。 そこで本研究では,追熟処理とコーティング処理を同時に行う新技術「エチレン含有コーティング処理」を開発した(Fig. 1)。本技術は,エチレンを含有させたアルギン酸ナトリウム溶液にバナナを浸漬し乾燥させるだけで,追熟促進と品質保持を同時に達成することを目的としている。この方法は燻蒸設備を必要とせず,短時間処理が可能である点で流通現場への適用性が高い。 通常のエチレン燻蒸処理との比較した結果,エチレン含有コーティング処理区は成熟進行がやや緩やかになるものの,最終的には燻蒸処理区と同等の成熟度に達し,十分な追熟効果を示した。また膜形成による外観保護効果が認められ,外傷や乾燥による劣化の抑制が期待できることが明らかとなった。 以上より,エチレン含有コーティング処理は,追熟と品質保持を同時に実現し得る簡便で省力的な技術であり,従来のエチレン燻蒸処理の代替あるいは補完技術として実用化が強く期待される。