FOOMA JAPAN 2024 〜世界最大級の食品製造総合展〜 | 一般社団法人 日本食品機械工業会主催

アカデミックプラザ

低温増殖性芽胞形成菌の制御による要冷蔵加工食品のロングライフ化

  • 口頭発表あり

2024年06月04日(火)10:30~11:00

テーマ

衛生対策・品質管理(殺菌、洗浄、異物除去含む)

研究機関名

地方独立行政法人北海道立総合研究機構食品加工研究センター・応用技術部・応用技術グループ

代表者名

能登裕子

発表概要文

 要冷蔵加工食品のロングライフ化には,10℃以下の冷蔵温度帯で増殖する低温増殖性芽胞形成菌の制御が肝要である。我々は,要冷蔵加工食品の微生物制御に資する知見を蓄積するため,低温増殖性芽胞形成菌の性状を明らかにし,加熱殺菌による芽胞の制御と要冷蔵加工食品(カレー等)のロングライフ化を検討した。 1)要冷蔵加工食品で制御すべき低温増殖性芽胞形成菌  Bacillus属およびPaenibacillus属細菌の諸性状を評価し,Paenibacillus属細菌の制御が重要であることを見出した。以下に低温増殖性Paenibacillus属細菌の特徴的な性状を示す。Bacillus属およびPaenibacillus属細菌の芽胞が加工食品中に生残した場合,低温での増殖能力が高く,二酸化炭素ガス置換雰囲気でも増殖への影響が小さいPaenibacillus属細菌の方が冷蔵保管中に発芽・増殖して腐敗を引き起こす可能性が高い。 ■耐熱性の高い芽胞(D90℃=25分以上)を形成する菌株は6℃以下でも増殖 ■二酸化炭素ガス置換雰囲気でも増殖(表1) 2)加熱殺菌によるPaenibacillus属細菌芽胞の制御  Paenibacillus属細菌の芽胞をより穏和な加熱条件で殺滅するための手法を検討し,食品添加物の熱死滅促進効果ならびに次亜塩素酸ナトリウム溶液処理の耐熱性低下作用を明らかにした。 ■アジピン酸もしくはフィチン酸によるpH調整とε-ポリリジンの併用処理は芽胞の熱死滅を促進 ■10 mg/L以上の次亜塩素酸処理によって芽胞の耐熱性が低下(図1) 3)要冷蔵加工食品のロングライフ化のための加熱殺菌条件  カレー,スープ等のロングライフ化に向けて,製品環境(pH,食塩濃度および耐熱性芽胞数)と加熱殺菌条件,保存性の関係を明らかにした。 ■30℃,5日間保存を達成する加熱殺菌条件は10℃,12週間保存を達成するための十分条件(図2) ■30℃,5日間保存における腐敗確率予測モデルを構築(式1)