FOOMA JAPAN 2024 〜世界最大級の食品製造総合展〜 | 一般社団法人 日本食品機械工業会主催

アカデミックプラザ

食品の安全・衛生を守るAll-in-One遺伝子検査システム

  • 口頭発表あり

2024年06月06日(木)15:30~16:00

テーマ

検査システム(センサー・計測・分析・モニタリング含む)

研究機関名

豊橋技術科学大学 機械工学系 マイクロ・ナノ機械システム研究室

代表者名

柴田 隆行

発表概要文

食物アレルギー物質や食中毒病原体から食品の安全・衛生を守るためには、簡便かつ迅速に複数項目の遺伝子検査が同時に行える技術の提供が必要となります。そこで我々は、マイクロ流体デバイス上に遺伝子検査技術の一つであるLAMP法を実装することで、1回の作業工程で多検体・多項目の同時検査が行える技術の社会実装を目指しています。  図1にシリコーン樹脂製のマイクロ流体デバイス(検査チップ)を示します。導入口より検体サンプルと遺伝子増幅試薬を導入し、複数の反応容器(各3 µL)に自律的に分注させます。その後、検査チップを湯中(60℃)で加温することで、遺伝子増幅反応を行います。このとき、各反応容器内には標的遺伝子のみを増幅させる種類の異なるプライマー(短鎖DNA)を予め固定化しておくことで、複数項目の同時検査が行えるようになっています。また、遺伝子増幅反応の可否は目視で判定可能(陽性反応:紫色から水色に変化)となっています。図の例では、サンプルとして小麦のDNA抽出液を導入すると、小麦および植物共通のプライマーを固定化した反応容器の色のみが水色に変化して正しく陽性反応を示しています。さらに、食物アレルギー3品目(小麦、落花生、そば)のDNA抽出液を混合して導入すると、落花生、そばに対応する反応容器の色も水色に変化して陽性となります。  図2は独立した2系統の流路デザインとすることで、2検体の同時検査が可能な検査チップです。図の例では、検査チップの上側の流路にサルモネラ菌、下側に腸炎ビブリオ菌のDNAサンプルを導入しています。反応時間30分経過後に、サルモネラ菌のプライマーを固定化した反応容器が水色に変化して陽性反応を示し、60分後には、腸炎ビブリオ菌を標的とした反応容器が陽性となり、2検体・2項目の同時検査を実現しています。  本提案の遺伝子検査システムは、PCR検査のように優れた検出感度と信頼性を有し、抗原・抗体検査キットのような迅速性・簡便性を有し、かつ多検体・多項目の遺伝子検査を1回の操作(検査)で実現し得る技術です。さらに、複数の反応容器に予め固相化するプライマーの種類や組み合わせを変更することで、ユーザニーズに応じて検査対象の種類を自由自在にカスタマイズできます。加えて、流路デザインを変更することで、所望の検体数・検査項目数の組み合わせに対しても柔軟に対応可能となります。