アカデミックプラザ2013

研究概要

水分存在下高温条件における食品タンパクの熱可塑性

研究機関名

石川県立大学・生物資源環境学部・食品科学科・食品加工学研究室

代表者

野口 明徳

本研究の主旨

[はじめに]
食品の加熱加工は常圧100℃以下の条件が一般的で、100℃を超える条件での素材成分の変化に関する研究は少なく、食品タンパクにおいても同様である。そこで、本研究ではタラ身肉タンパクを対象に100℃以上での挙動を検討し、熱可塑性を観察したので報告する。

[実験方法]
湯煎(100℃・5min)済みタラ魚肉筋繊維(水分含量72wt%)を水分調製後に金属容器内で100~160℃・10minの高温処理を行った。筋繊維の構造変化は光学顕微鏡およびSEMを用い、伸張破断強度はレオメーターで測定した。また、タンパクの溶解性、近赤外スペクトル解析、化学修飾によるペプチド結合形成阻害、異種タンパク間の結合可能性、アミノ酸分析を行った。

[結果と考察]
①DSC測定:試料水分0wt%では発熱・吸熱は観察されず、50wt%では130℃付近に微弱な吸熱を観察した。DSC測定後の状態観察では50wt%の場合のみ、試料が熱融着しガラス状に変化しており、水分存在下での高温条件においてタラ筋繊維の熱可塑性を示唆している。
②構造観察:処理温度上昇に伴い、筋繊維の変形・融着を観察した(図1)。
③物性測定:高温処理後では、処理温度上昇に伴い強度が大幅に増加した(図2)。
④溶解性測定:100℃処理を基準として、処理温度上昇に伴いタンパク溶解性は僅かであるが低下した。
⑤近赤外スペクトル解析:吸収スペクトルのニ次微分より、4860cm-1 (ペプチド結合由来のN-H)の吸収増加を確認した。試料水分の増加はこの吸収増加を抑制し、脱水縮合反応であるペプチド結合の新たな形成を示唆している(図3)。
⑥化学修飾によるペプチド結合形成阻害:DNBS化で、高温処理後の試料の伸張破断強度は、温度上昇に伴う強度の上昇が抑えられており、また溶解性低下も抑えられた。
⑦異種タンパク間の結合可能性:単一タンパクと比較すると、伸張破断強度は低下する傾向を認め、異種タンパク間で相互排斥の可能性がある。
⑧アミノ酸分析:各処理後、特段の大きなアミノ酸の消長は観察されず、栄養価低下の問題は少ない。

[まとめ]
魚肉タンパクであるタラ筋繊維は一定水分存在下の高温処理で熱可塑性を示し、筋繊維の変形・融着が確認された。また、ペプチド結合の新たな形成が示唆され、タンパク溶解性は減少するが、アミノ酸の消長で特異的なものはなかった。さらに、異種タンパク間の排斥傾向を認めた。熱変性により一般的な加工特性を失った食品タンパクにおいても、その有効利用と相互排斥による組織性強化の道を見出した。

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図1. 高温処理後の筋繊維の外観(断面が円形に近い筋繊維が扁平化)

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図2. 伸張破断相対強度(100℃を1.0)

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図3. 4860cm-1の吸収増加(左図スペクトルの2次微分後であるため吸収増加は負の方向になる。右表は処理温度と加水有無)

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