アカデミックプラザ

研究概要

衝撃力による指骨の損傷レベルに関する検討
―摸擬指骨を用いた実験的調査およびFEM解析による骨折形態の分析―

研究機関名

山梨大学 工学部 機械工学科 伊藤(安全医工学)研究室

代表者

伊藤安海

本研究の主旨

1.はじめに
手指に関する災害は日常生活の様々な事故によって発生している.そこで,食料品加工機械の安全設計が重要であり,そのためには,外力によって手指が受ける損傷レベルの正確な推定が必要である.しかし,手指損傷に関する生体力学的な研究はほとんど行われておらず,その評価手法が確立されていない現状である.
 本研究では,ヒト指に対する衝撃力と損傷レベルの関係を明らかにするために,ヒト指を模擬したブタ尻尾に対して様々な条件での静的圧縮試験および動的落下試験を行った.その際,さまざまな指挟み事故を想定した実験を行うために,先端の角度や幅の異なる冶具を複数作成し,骨折の有無の評価から,その影響の考察をした.
 また,有限要素法を用いたコンピュータシミュレーションソフトMECHANICALFINDERを利用し,CTスキャンデータから要素ごとの骨密度を考慮した3Dモデルの作成およびその解析により,実験によって得られた値との比較や,ひと指と豚尾骨の特性の比較を行った.

2.実験材料および実験方法
2.1 実験材料
 ヒト指と形状・構造が似ているブタ尻尾を用いる.
2.2 使用冶具
 Fig. 1に示す先端の角度・幅が異なる冶具を使用する.
2.3 ブタ尻尾に対する静的圧縮試験
ブタ尻尾に対してFig. 2に示す万能試験機を使用した一定速度での静的圧縮試験を行う.
2.4 ブタ尻尾に対する動的落下試験
 ブタ尻尾に対して,Fig. 3に示す落下試験機を使用した落下高さを変えての動的落下試験を行う.
3.実験結果および考察
 豚尾に対する静的圧縮試験における,各条件での最大荷重をFig. 4に示す.圧縮冶具の先端角度で比較すると,先端が鋭いほど小さい荷重で骨折が発生した.応力が集中し,軟組織に食い込みやすくなるためであると考えられる.先端幅で比較すると,先端幅10mmで荷重値が急激に減少した.幅10mmの場合,陥没し押し潰されたような骨折の形態を示したため,幅7.5mmと10mmとの間に単純骨折と粉砕骨折の境界が存在すると推測される.
 豚尾に対する動的落下試験における,各条件でのエネルギーと骨折有無の関係をFig. 5に示す.いずれの条件でも9J前後で骨折が発生したため,動的な速度域では冶具の先端の形状はあまり影響しないと考えられる.
 以上より,指骨損傷評価では,挟まれた際の速度や挟まれ部の形状を考慮する必要があることが明らかとなった.

4.FEM解析
ブタ尻尾に対してFEM解析を行った結果をFig. 6およびTable 1に示す.ブタ尻尾に対する静的圧縮試験において得られた骨折荷重の実験値とFEM解析の結果は近い値をとり,FEM解析が指骨骨折リスク評価に有効なツールであることが確認された.

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