アカデミックプラザ

研究概要

野菜や果物の「おいしい」を届けるために ―青果物の品質変化や損傷発生を予測する―

研究機関名

(独)農研機構 食品総合研究所 食品工学研究領域 食品包装技術ユニット

代表者

北澤裕明

本研究の主旨

 2020年度までの農林水産品の輸出1兆円の目標達成のため、農産物の長距離輸送技術の確立が求められている。しかし、農産物、特にイチゴを代表とする軟弱な青果物は、工業製品とは異なり、その流通過程において外観・硬さなどの物性が容易に変動する。また、輸送経路の長距離化・複雑化に対応した流通安定技術は確立されていない。本研究では、青果物の流通システム確立に資するため、物性を含む品質変動の定量的な予測手法、物理的な損傷発生メカニズムに関する以下の検討を行った。
1.イチゴを対象として、収穫後の冷却の遅れが保存中のアスコルビン酸含量の変化に及ぼす影響を検証した。その結果、収穫後の冷却が16時間以上遅れた場合、総アスコルビン酸含量の有意な低下が引き起こされることが明らかとなり(Fig. 1)、その原因は積算呼吸量がある閾値を超えたことによるものと考えられた。従って、収穫から消費に至るまでに想定される時間を踏まえた上で、そのような閾値を超えないように収穫後の冷却を実施することが望ましいと考えられた。
2.トラックを用いた食品流通時の輸送振動を実測し、積載量が輸送中の衝撃およびPSD(Power Spectrum density、パワースペクトル密度)に及ぼす影響について調査を行った。その結果、積載量が少ない往路において衝撃加速度が明確に大きく、衝撃による損傷が大きくなることが予想された(Fig. 2)。一方、積載量が多い復路においては5 Hz以降においてPSDが大きく、共振による損傷が発生しやすいことが懸念された。従って、軟弱食品の損傷低減には、積載量についても考慮する必要があるものと考えられた。
3.イチゴを対象として、繰り返し衝撃による果実の損傷発生に及ぼす、衝撃のピーク加速度と速度変化の影響を調査した。試料に同一の衝撃加速度を印加した場合においても、ピーク加速度にともなう速度変化が異なれば、損傷発生に要する衝撃繰り返し回数が様々に変化することを実証した(Fig. 3)。
4.緑熟トマトを対象として、果皮色変動の予測モデルを作成、評価した。その結果、果皮色変動を高い精度で予測が可能であること(Fig. 4)、果皮色により果実硬度を推定可能であることを明らにした。この様な知見を蓄積することで、流通過程では一定の硬度を保持し、消費時には適度に柔らかくなるような、クライマクテリック型青果物の供給システムが設計可能になるものと考えられた。

Fig. 1
収穫後の冷却遅れがイチゴの果実の総アスコルビン酸含量に及ぼす影響(*は、収穫直後との比較において5%水準で有意差があることを示す(Dunnett’s test))

Fig. 1 収穫後の冷却遅れがイチゴの果実の総アスコルビン酸含量に及ぼす影響(*は、収穫直後との比較において5%水準で有意差があることを示す(Dunnett’s test))

Fig. 2
輸送中の振動・衝撃の解析事例(埼玉~広島間の同一経路で比較)

Fig. 2 輸送中の振動・衝撃の解析事例(埼玉~広島間の同一経路で比較)

Fig. 3
イチゴの果実の損傷発生に及ぼす衝撃繰り返し回数(N)、速度変化およびピーク加速度の関係

Fig. 3 イチゴの果実の損傷発生に及ぼす衝撃繰り返し回数(N)、
速度変化およびピーク加速度の関係

Fig. 4
トマトの果皮色予測モデルの評価

Fig. 4 トマトの果皮色予測モデルの評価

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