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研究概要

物性制御による澱粉含有焼成食品の高付加価値化

研究機関名

広島大学・大学院生物圏科学研究科・食品工学研究室

http://home.hiroshima-u.ac.jp/~foodeng/index.html

代表者

川井 清司

本研究の主旨

  澱粉の主成分であるアミロペクチン(ブドウ糖の房状高分子)は、結晶質と非晶質とが混在した半結晶性高分子である。加熱過程において、結晶質アミロペクチンは融解し、非晶質となる。しかし、その融点は水分含量の低下によって上昇するため、低水分系澱粉含有食品の加熱過程では、融解を免れ得る(Fig.1)。結晶質アミロペクチンは非晶質よりも構造的に安定なため、消化酵素の作用に対して抵抗性を示す。このような澱粉は、難消化性澱粉などと呼ばれ、整腸作用、食後血糖値の上昇抑制、プレバイオティクスなどの機能性を有することが知られている。一方、非晶質アミロペクチン及び澱粉の第二成分である非晶質アミロース(ブドウ糖の鎖状高分子)は、温度がガラス転移温度以下になったとき、ガラス状態になる(Fig.1)。ガラス状態において、これらの非晶質は硬くて脆い力学的性質を示すのに対し、ラバー状態(ガラス転移温度以上)では粘弾性体として振舞う。したがって、非晶質のガラス転移によって、澱粉含有食品のテクスチャーは著しく変化する。非晶質のガラス転移温度もまた、水分含量の低下と共に上昇する。
  前述のとおり、加熱過程における澱粉の物理的性状変化は温度及び水分含量によって制御可能であり、それによって澱粉含有食品の品質制御や機能性付与が可能となる。本研究では、実在する澱粉含有焼成食品(クッキー)を研究対象とし、そのガラス転移温度や焼成過程における温度及び水分変化履歴の評価システムを構築した上で、その評価を行った。また、原料の成分や焼成条件がガラス転移温度やin vitro消化性に及ぼす影響を明らかにすることで、その可能性について検討した。本研究成果は、米粉、小麦粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉などの用途開発や、クッキー、ビスケット、クラッカー、煎餅などの澱粉含有焼成食品の高付加価値化への利用が想定される。

加熱過程における澱粉の物理的性状変化

Fig.1 加熱過程における澱粉の物理的性状変化