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研究概要

ナノサイエンスによる食品物性解析
-納豆の糸引きとComputer Simulation-

研究機関名

静岡県立大学・食品栄養科学部・食品生命学科・食品物理学研究室

http://sfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/physics/

代表者

一ノ瀬 祥一

本研究の主旨

納豆は日本人が古くから好んで食してきたものである。健康に良いことは言うまでもないが、そのヌルヌルとした舌触りは他の食品にはない絶妙な食感(テクスチャー)である。ナノスケールでは高分子(ムチン、ポリグルタミン酸)が絡み合ったもので、その'ソフト'な構造が独特の感触を醸し出しているのである。納豆の糸引き現象の実験測定は過去十分に行われてきた。しかしその動的振る舞いの力学的解析は非常に難しいことが分かっている。粘弾性体の伝統的な力学解析はレオメーターを使い、伸び・縮みの長さ(変形)と加える力(応力)の関係をみることである。これにより弾性率、粘性率等の物性値を知ることができる。但しこの物性値の決定にはマックスウェルモデルなどの線形モデルを基本にしている。これは変形が微小の場合には有効であるが、大きい場合は無力である。非線形性が最も顕著に出ている糸引き現象の解析には適さない。一般にモル数オーダーの「複雑系」の現象の特徴に 1)非線形性、2)内部相互作用(摩擦)による熱の発生[散逸性]、3)非平衡、4)外界(環境系)との物質流の存在[解放性]、5)粒子サイズ・緩和時間・音速等の複数のスケールの存在[マルチスケール]、6)ナノスケールでの不規則運動[ゆらぎ] などがある。これらは、近年「ソフトマター物理学」や「(物質)場の理論」での理解が進んでいる。特に「繰り込み群の方法」と呼ばれる(エネルギー)スケールを変えた時の応答に着目する手法が注目されている。(物性)物理学のなかで摂動(線形近似のこと)を使う解析は非常に成功しているが、それを超えるもの(非摂動)は少数の例外を除いて難しい。「繰り込み群の方法」は非摂動的解析の有望な方法である。またアインシュタイン理論(幾何学)がレオロジー物性に関係していることが最近わかってきている。特にナヴィア ストークス方程式(流体の運動方程式)と重力場の方程式の関係が注目されている。上記複雑系の数理モデルの解析はコンピューターによるシミュレーション(数値実験)で具体的に行われる。シミュレーション技術の向上も著しく、今回は「格子ボルツマン法」を使う。この方法は微分方程式に立脚する従来のものではなく、ボルツマンの輸送方程式に基礎を置くものである。位置と速度の空間(位相空間)を離散化し、(温度や速度の)分布関数の時間発展を追うのである。プログラムが簡単である、並列計算に適している等の特徴がある。

納豆の糸引き

Fig.1 納豆の糸引き

グルタミン酸のモデル。

Fig.2 グルタミン酸のモデル。
各色棒は H(白)、C(黒)、O(赤)、N(青)を表す。


アンドロメダ銀河

Fig.3 アンドロメダ銀河。
宇宙の物理法 則がレオロジー物性の解析に有効である。銀河を構成する星(数千億個)はそ の中心のまわりをきわめてゆっくり(数億年周期)回転している。その速度分布を説明するには「暗黒 物質」が必要であることがわかっている。

2次元正方形領域内の自然対流の流線

Fig.4 2次元正方形領域内の自然対流の流線